衣料品やバッグなどのしみ抜き依頼として持ち込まれる中でシミではなく内側からの樹脂の浸み出しが原因のケースがよくあります。
特徴として油じみのように際(キワ)がなく少しべとつきがあります。
これは主にポリウレタン製品で起きる場合が多いです。

衣料用のポリウレタンの耐久年数は製造から約3年で
少しずつ加水分解を起こして劣化していきます。

人間の寿命と同じで好環境で劣化を遅らせることは出来ても止めることは出来ません。

数十万円もする高級ブランド品でも例外ではありません。

*

バッグの場合は
水が浸み込まないように内側に樹脂がコーティングしてあったり内袋がポリウレタン製の合成皮革だったりします。

衣料品の場合は
合成皮革やボンディング加工の貼り合わせにポリウレタンが使用されてます。

いずれも樹脂が溶けたようになって表側に浸み出してきます。

予兆として

●何となく湿っぽい
●何となく重みを感じる
●コシがなくなった(ふにゃふにゃする)
●色移りする

など感じ出したらそろそろ来ますよ。

水洗いはダメなのか

水洗い(可)の物は大丈夫です。(加水分解起こしてたら手遅れです。)

ただし乾燥は充分に!

ちょっと矛盾ですけどわかりやすく表現すると
水より空気中の湿気(水蒸気)の方が曲者!
多分水より空気中の湿気(水蒸気)の方が分子間引力が弱く加水分解反応がしやすいからだと思います

勿論何日も水に浸けっぱなしや濡れたままの保管はダメですがそのへんは常識で判断してください。

加水分解

表面がべたつきや濡れたようなシミが出来る

下の写真はボンディング加工の内側ですが加水分解を起こすとべとつき負荷がかかると簡単に破れ、剥がれていきます。

加水分解

裏側のポリウレタンコーティングがは剥がれている

日本は欧米に比べ湿度が高く温暖ですからポリウレタンが加水分解を起こすには好条件の環境にあります。
最近は技術も進歩しポリウレタンも耐久性をもってきましたがそれでも加水分解をなくすことは出来ません。
特にコピー大国と言われる某国製のポリウレタン製品は開発途上のポリウレタン技術をコピーしたものが多く要注意です。

ではどうすれば予防できるのか

残念ながら実のところ対策はありません。
ひとたび加水分解が起きるともう止めることは出来ません。
巷にべとつきを止める修復がありますがあくまでも一時的に表面的に止めているだけで内側では加水分解の進行はさらに加速しています。

我々でも修復は不可能です。
ポリウレタンの特性をよく理解し大事にしまっておくのではなく

寿命までの期間をめいっぱい楽しんでください。

人生とよく似てますね。

*

買って一年もしないうちにこのような症状を起こす事があります
それは製造してから購入までの在庫期間が長い事が原因と考えられます。
今のところ製品に製造年の表記はありません。
ポリウレタン製品やボンディング加工された衣料品は購入時はそのことをよく理解しておきましょう。