今日はなかなか取れないインクのシミです。
インクのシミの特徴は
素材の色をもろともしない濃度なので
溶かすととてつもなく広がります。
「インクの爆発」と言って
取ろうとすると溶け出したインクの染料が周りに広がり
たとえコメ粒ほどのインクでも
10㎝以上に広がる事ことがあります。
なので広がらないように吸い取りながら
何度も何度も繰り返して取り除いていくわけですが
今回の物は全く動きません。
少し硬いので染料系のインクではなく樹脂顔料かもしれません。
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染料と顔料の違いを少し解説しますと
染料は粒子が細かいので繊維に滲み込み
バインダーが無くても分子間引力やイオンの力でくっついています。
バインダーが無いので風合いも変わりません。
これを「染まる」と言います。
逆にバインダーを必要としないので
インクの様に濃い染料は取ろうとして溶かすと
どんどん広がりながら染まっていきます。
これが最初に述べた「インクの爆発」ですね。
染料は粒子が細かいので
色物の繊維は繊維の色と染料の色と合わさり、
下図の様にくすんだ色に染まります。
白以外の素材ではなかなか鮮やかな色に染まりません。
染料で鮮やかな色を出したいときは
繊維を一度漂白(晒し)し真っ白にしてから染め込みます。
また粒子が細かいので壊れやすく
日光や汗や排気ガスなどによって色が褪せてきます。
特に粒子が細く比重の軽い青系は日光で壊れやすく
カーキ色の防寒着がオレンジっぽく変色するのは
青系が壊れてオレンジ系が残るからです。
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一方、顔料は岩石を砕いたものが多く
粒子が大きいので繊維にくっつきにくいのです
なので顔料にバインダーの樹脂を混ぜ、素材に定着させます。
粒子が大きいため繊維の色を隠してしまうので
繊維の色は反映されず顔料の色そのままに鮮やかな色に染まります。
どうしても取れないシミはこの顔料で隠ぺいしたりしますが、
樹脂の分だけ厚みが出る為に厚みや硬さなど風合いが変わります。
この場合「染まる」という表現は正しくないかもしれません。
で本題に戻り、
樹脂処理をしましたが股く動かず。
そこで再度基本に戻って
油性・水性処理、漂白と進むと動き始めました。
地色に少し変化がありましたがそこは色修正でフィニッシュ!
18分少々の奮闘記で御座いました。
最後に考察ですが
樹脂膜を取り除くことで色素が反応したと考えられます。
おそらく染料に樹脂を混ぜて定着を上げたものではないかと思われます。
1分に圧縮しての動画でございます。
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