若い頃、

SF作家の星新一さんのショートショートシリーズが好きでよく読んでた。

その一冊、「ようこそ地球さん」(だったかな)の中に

「空への門」と言う題名のショートショートがある。

宇宙飛行士を目指して

難しい勉強や訓練を乗り越えて

十数年たちやっと卒業したのに

別の分野の同級生が

訓練を必要としない宇宙船を開発したというストーリー。

この話をいまだに思い浮かべるには訳があって

他人事ではなく

我が業界にもあり得る話だと思うからです。

今回のコロナ騒ぎで

クリーニング業界は生活関連事業で

自粛規制の対象外業種でしたが

人が動かなければやはり落ち込むわけです。

「ワクチンができるまで仕方ないなぁ。」

などの声がチラホラ。

でも私はもっと重篤な危機感を持ってます。

クリーニングと言う仕事は

「汚れたから洗う」

「シワになったから仕上げる」

「シミがついたから取る」

と言う構造の上に成り立っています。

本質ですからスキルアップは当然です。

しかし

「汚れなかったら?」

「シワにならなかったら?」

「シミがつかなかったら?」

数十年後には

「汚れない服」

「しわにならない服」

「シミがつかない服」

が出来るでしょう。

そうなると今の仕事構造自体が無意味なものとなり

宇宙飛行士の様に行き場がなくなってしまいます。

形状記憶や防汚など今はまだ加工レベルですが

そんな服もうありますよねぇ。

十数年後のそんな様子をコロナが今示してくれてるように思います。

だってコロナの影響で出歩かないという事は

「服が汚れない」

「シワにならない」

「シミにならない」のと

同じ事じゃないですか。

業界の落ち込みをコロナのせいだけにするのは

本物の危機に目が向かず言い訳っぽい気がします。

ミナペルホネン展より

我々が十数年後も生き残るためには

汚れ・シワ・シミといった

やがて凌駕されるであろう有形のサービスに頼る仕事構造だけでなく

汚れなくても

シワにならなくても

シミがつかなくても

いつの時代にも凌駕されない無形のサービスにも

比重を置いてなければいけないと思ってます。

先日、兵庫県立美術館

デザイナーの皆川明さんのミナペルホネン展に行ってまいりました。

皆川さんの作品(お洋服)を持ってらっしゃるお客様がいて

何度かメンテさせていただいてます。

皆川さんの思考が理解できれば、

メンテの方向も皆川さんに近づけるかな。

同じデザインの物がたくさん展示してあり興味津々です。

ミナペルホネン展は写真撮影OKのブースがあって

貴重な展示を沢山撮ってきました。

ミナペルホネン展より

皆川さんが仰っていた事、

「物作りは物に感情(魂)を注ぎ込むこと。」

「観る人と空間で繋がりたい」

ミナペルホネン展より

この言葉で今日の鑑賞料の元が取れたなと思いました。

ほかにもいっぱい文字列が並び

無形のサービスの大きなヒントになったように思います。

ミナペルホネン展より

私が目指すところ

あのお店に行くとワクワクする。

あの店に行くことがステイタス。

あの店に行くことがお洒落の証。

服の完成品ではなく服の感性品でありたい。

*

さてさて

本日のお題は

「バッグを洗って色が出た」

 

シミを付けてしまったのでメーカーにクリーニング依頼したのですが

全然取れてなかったので自分で水で洗ったそうです。

うまく取れたそうですが乾いてみると写真の通り。

パイピングの革から色が滲み出ています。

方々に持って行ったそうです。

中には「塗って復元できます」とか簡単に言われて

ブランド品だけに不安になり引き上げてきたそうです。

それ正解です!

一点一点シリアル番号の入ったお品は

作者が魂を込めて作った作品。

それをキャンバス地に塗って隠ぺいするなんて・・

作者に失礼極まりない行為

もっと敬意を表しなさいと言いたい。

で、

ある店でこれを触れるのはおそらくあそこしかない。

と言われ当店に来たそうだ。

そう思われてるのは光栄な事ですが

そう言われてもこれはやばいですよ。

「魂を込めて・・」なんてタンカを切った以上

選択肢はかなり絞られてると言うか

「残念ですが」と言いたい。

結局、スタッフは

「完全は無理ですが

持ち歩けるぐらいまでは

なんとか頑張ります。」と

私の”お客さんの笑顔が見たい病”に感染していた。

ある意味コロナよりも危険かも。

イジメか!

だが秘策がないわけでもない。

スタッフも馴れたもんで

私をイジメる範囲の限界を把握しているようだ。

毎日がこんなで私もスタッフに鍛え上げられて今がある。

 

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